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自家採種ハンドブック

自家採種ハンドブック
ミシェル・ファントン他 著

目次
第一部
種子保存のネットワーク
生物多様性の背景
第二部
種採りの基本
第一章どんな種子を守っていくか
第二章交雑の防止と種子の生産
第三章採種のあとは
第五章種まきと設計
第六章特別な仲間ーーウリ科植物
第三部品目別の種採り法(この項にはキャベツ、ブロッコリ、ゴマ、インゲン豆、など個別の手順が記載されている。)

農業の大規模化が促進されている。農業の国際競争力を高めるのがその目的とされているが、農業は本来大規模に行うには向かない。農業は自然の一部として存在するのであり、自然は産業化に適しない。国際競争にも適しない。

人力で世話が出来る範囲を超えて、農業を一つの大きな産業にしようとすると、大規模な機械を投入しなければならず、農薬や化学肥料を大量に投入する必要がある。そのようにして単位面積当たりの収量を上げ、単価を下げる。このような競争が最低価格を求めて国内外で行われている現在、栽培される作物は換金作物が主流とならざるを得ず、品種はだんだん限られてゆく。しかも遺伝子組み換え技術によって、自然界ではあり得ないような、虫の遺伝子と植物の遺伝子が組み合わされている。

最近では工場で生育環境を完全に管理して、日の目を見ないままに育つ野菜が作られているという。今や、卵、肉に加えて、野菜までが一つの工業品になろうとしているのだ。自然界は多種多様なものであり、それを人間の都合だけでゆがんだものにしてはならないと思う。

ちょうど連休が始まる。買ってきた野菜や果物から種を採ってみたらどうだろう。そうして来年蒔いてみる。買ってきたものはF1種だから、もとの野菜や果物のように甘くなくおいしくないかもしれないが、これを繰り返すうちに自分の家のウリができ、スイカができる。私は昨年ゴマを蒔いて収穫した。ゴマは手入れが要らず良く実る。今年はネギ、エンドウなどを育てている。自分で育てたと思えば愛着も湧く。みんなが自分の食料を少しだけでも自給するようになれば、食糧問題も改善するのではないか。何より、楽しい。

食糧問題については様々な本が出ている。私が読んだなかで最も印象に残ったものはFatal harvest(アグリビジネスの問題点を扱った本)と「なぜ世界の半分が飢えるのか」(開発途上国への農業援助のあり方を問う内容)である。機会があれば一読をお勧めする。
by cahiersauvage | 2010-04-30 18:18 | 本の紹介