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人種問題

人種問題
スタッズ・ターケル著

以前紹介したスタッズ・ターケルの本。一般人が経験した人種差別の模様を載せている。1人1人の話が詳しいため、どのような場面でどのような差別を受けたかが非常によく分かる。良くできた、説得力のあるレポートだ。読み物としても耐える。

人種による差別、職業による差別、生まれによる差別、様々な差別があり、差別はいけないことだと多くが思っている。私も同様だが、この本を読むと、差別はいけない、という自分が何となく浅薄な気がしてくる。

差別についてどれほどを知っているのか、、、実は私はほとんど知らない。身の回りに差別を受けた人も、自分が差別されたこともないからだ。差別は偏見に由来し、偏見は対処の仕方が難しいと思う。なぜなら、偏見を意識している場合が少ないからだ。私たちは自分でもそれと気づかず偏見を抱いていることがままある。そういうところが恐ろしい。

二十年以上も前になると思うが、黒人に対する強い偏見を持った白人の男が、その偏見ゆえに黒人をリンチするというような映画があった。題名は忘れてしまったが、この映画が偏見というものの真実をよく伝えていた。主人公の白人は、黒人に対する強い偏見をもつ家庭に育ち、根拠無く白人は全てに優越するものであり、黒人は人間以下であるということに疑いを持つことすら、考えられないような家庭に育った。そのようにして主人公は、なんの疑いもなく黒人にむごい仕打ちをするが、裁判にかけられて、その行為の間違いを指摘されても、彼には理解することすら出来なかったのだ。偏見とはそういうものだと思う。

人種に基づく偏見はアメリカでもっとも顕著だが、日本にも、形を変え、対象を変えた人種的偏見、あるいは職業に基づく偏見、様々あるのであり、表面的には偏見を持つのは良くないといっているものの、その実態を知っている人は一体どのくらいいるのか。しかし一方で、実態を知らないものに実態を知らせて、要らぬ先入観を植え付けるのではないか、という懸念を指摘する向きもある。

昨年アメリカでは歴史上初めて、やっと、白人でない大統領が選ばれた。これでアメリカもやっと、自らを正すことが出来たのかと思う。つい半世紀前にはバスに乗るにも、トイレを使うにも、明確に黒人を差別してきた国だ。

振り返って私たちも、常に、故のないことで人を一方的に判断していないか、慎重に考えなければならないと思う。
by cahiersauvage | 2010-04-26 19:28 | 本の紹介