七歳までは夢の中
松井るり子
学陽書房
この間出会った「輝く人」の口から出たシュタイナー。リトミックの発案者だとばかり思っていたら、かなり深い思想を提示していることが分かって、早速読んでみた。
最初に届いたのが「七歳までは夢の中」。この本はシュタイナー教育を実践している小学校と幼稚園の模様を保護者の目線で記したものだ。私にとっては大変示唆に富む内容で、しかも、私の信じるところについて裏付けを与えられた気がして、気分良くあっという間に読み終わった。シュタイナーは自然の摂理ということを大事にしているらしく、子どもが使う粘土やクレヨンには蜜蝋粘土、蜜蝋クレヨンという、蜂が作り出す蜜蝋を原料とした物を使ったり、教員が身につけている衣服の素材や、子どもが使う布も自然素材の綿や絹を使っている。食についてもなるべく自然の物を食べることを心がけているようで、玄米や野菜スープを醤油だけの味付けで食べさせている。自然が提供してくれる物を感じさせ、ひいては自分とは何かを考え、自分が占める自然界での位置を感じさせるということに繋がると思う。
最初に出会うものは相当な影響があって、それによって良くも悪くも一定の価値観ができるように思う。自身を振り返ってみると、中学の時に初めて英語というものに出会い、その先生が発音する英語の音に私は感動した。以後、私の勉強といえば英語だけで、特に発音と抑揚は美しさを追求した。英語を勉強すればするほど日本語への興味も湧いてきて、大人になって英語の仕事をするようになってからは政治経済はもとより心理学、社会学、環境学、その他諸々も勉強した。世界で初めて青色の発光ダイオードを作ることに成功した中村修二氏は、その著書「怒りのブレーク・スルー」の中で、勉強は自分の好きなものだけすればいい、あとはそれを深めるに従って身に付いてくるものだ、と述べているがまさにそれが私にも当てはまる。
また、私の実家は農家であったため、おかずといえば野菜の煮物や揚げ物ばかりであった。子どもの頃、意識しないうちに本来の味を感じてそれをそうあるべきものとして位置づけられたということは、子どもを育てるときに大いに役に立ったと思う。子どもが嫌いなものでもすり下ろしたり細切れにしたりせずに、大きく切っておかずにした。それを好きになっても嫌いになってもかまわない。要は人参とはどういうものであるか、ゴボウとはどのような味がするものかを分かり、自分が好きか嫌いかを分かることだと思う。
この本の中に「作られたものより生まれたものの方がすぐれている」ということが書かれているが、とても共感できる。新しいものを作るためにはまず(自然界から)生まれたものを観察することは珍しいことではない。
初めて体験することの重要性を感じられる一冊だ。