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シュタイナー その3: 食

あるシュタイナー幼稚園では水曜日がスープの日。この日は各園児が自分のところで採れた野菜(買ってもよい)を一つずつ持ちより、全部を鍋に入れて茹で、醤油だけで味付けして食べるそうだ。

自然のものになるべく手を加えず用いるというシュタイナー思想を実践したものだ。大人にとってはこのスープがおいしいとはお世辞にもいえないと思うが、ものの原点を知るという意味でとても大切なことだと思う。すべてのものは原点から出発するのであり、大人がうまいと思う複雑な味付けや香辛料をたっぷり使った手の込んだ料理から素材自体の味を知ることは難しい。まだ味覚が確立していないこのころだからこそできることだ。

このことからわたしは子どもの遊びを連想した。例えば複雑なゲームをすると、それができるようになった後に確かに達成感はあるが、それから何が生まれるだろうか。一方、粘土や木や水などで遊べば、子どもの想像力、創造力は限りなく発揮される。粘土や木ぎれは船にもテーブルにも羊にも、それこそ何にでも子どもの思うものに変身できるのだ。うちの子が保育園の頃には板きれのお皿に泥で作った団子やカレーなど、ありとあらゆるものを乗せてわたしに食べさせてくれた。木ぎれも泥の固まりも、子どもたちにとっては本当の皿であり、カレーになることができるのだ。こんな並はずれた創造力はこの頃にしか発揮できない。

ものの味についても、まず素材の味をしっかり確立させることによって複雑な味の組み合わせということが可能になるのではないかと思う。わたしは料理があまり得意ではないので偉そうなことはいえないが、料理の達人はよく「素材の味を生かしたい」といっているから、素材の味を知るということは正しいと思う。

人にはそれぞれの時代にしかできないことがあり、これを大切にしたい。
by cahiersauvage | 2011-02-18 08:16 | 本の紹介