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思いがけない出会い

辻紀子さんという人の講演会に行ってきた。

演題に立った辻さんを一目見てすてきな人だと思った。

話は子供が授からなかった一組のアメリカ人の夫婦が12人の養子を育てた、という話。養子をもらう段階で、人間は皮膚の色や生まれなどで差別されるべきではないとの主張から、当時はまだまだ人種差別の激しかったアメリカの社会と、その夫婦は戦った。そのような経緯を思い出と共に語られた。話自体は結構とりとめのないものだったが、辻さん自身から発する雰囲気と、その言葉の新鮮な感じに私は打たれた。
話自体ではなく、その人から発する何かに感銘を受けたのは、佐野えんねさんに続いて二度目だ。その人自身がこんな風にしみじみとした何かを発するというのは、やはりその人自身の中に詰まっているものが、発せられる言葉以上に多くを語ったからに違いない。一生忘れない人の一人となった。

血のつながりということを大事にする傾向が日本人には強いが、私はかねがね生まれてくる子供は運命みたいなものであり、よその子もうちの子も、一緒に暮らせばみんなうちの子だと思ってきた。だから、養子については特に何とも思っていないが、次の世代を育てることは強く勧める。家族の中に子供がいるということはそれだけで楽しい。育って行くときも、育ってしまってからも。

実はこの講演会は当初出る予定ではなく、誘われて聞きに行ったものだったが、思いがけず素敵な出会いに恵まれた。聴衆がそれほど多くなかったので、会場を出るときに出口にいらした辻さんと握手する機会を得たが、その握手の仕方が力強く、触った手の感じもとても好きだった。

辻さんは先の夫婦の話を日本語で出版するべく翻訳した後にたくさんの出版社に持って行って出版を依頼されたそうだ。もう半世紀も昔のこと故、手書きの原稿を自ら携えて一社、一社を回ったそうだ。その強烈な熱意にも感動した。出版のこと以外にも、自分の意志を伝えるためにあちこちに手紙を書いたことなども語られたが、そういうところにも強い熱意と実行力を感じた。

そんな熱意が、最後の握手によく現れていたように思う。

「願い事はきっと叶う。叶わないのは願い方が足りないからだ」という、たしかピアノレッスンという映画の冒頭に現れる言葉をまた、思い出した。

きっと便りを出すことがあるに違いないと思って名詞をお願いしたら、快くくださった。是非、もう少しお話を聞きたいと思う方だ。

辻さんは我が家からそれほど遠くないところにお住まいで、岐阜県人として誇らしい。

辻さんが翻訳された12人の養子の話を読んでみたいという方は、
「一ダースのもらいっ子」
ヘレン・ドス著
辻紀子訳
キリスト教新聞社

英語でも読める。
The Family Nobody Wanted
by Helen Grigsby Doss