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茶漬けの作法

食事の締めくくりは必ず茶漬けにしている。生涯の終わりに一番食べたいものはと聞かれたら迷わず茶漬けと答える。それくらい私は茶漬けが好きだ。沢庵か梅干しの茶漬けが最高だが、昆布の佃煮や梅干し茶漬けなどのような市販の茶漬けも好きだ。あのさらさらとした喉ごしと、腹に入ったあとのさっぱりした負担のない感じがとてもいい。

昔、外食屋で茶漬けを食べたことがある。梅干し茶漬けを頼んだところ、確かにそれらしいものは出てきたが、私の期待は大きく裏切られた。ごはんと梅干しとはあったが、それにかかっていたのは出汁だった。こんなのは茶漬けとはいえない。だいたいお茶がかかってないじゃないの!!断然許せない。かててくわえて、つゆが少ない。茶漬けはごはんの頂上が少し顔を出す程度になみなみとお茶が注がれていなければならない。そうしたたっぷりのお茶とごはんと梅干しを、ちりちりとなる塗り箸でさらさらっと流し込むようにいただく。これが私の茶漬けの作法だ。ごはんは玄米。玄米の複雑なうまみと沢庵や梅干しの質朴な味が互いに引き立てあって誠にうまい。

「そんなに茶漬けばかり食ってると胃が悪くなるぞ。」
今年82になる父が横からこそりと言う。父は一口入れたら30回噛む。
「そんなに噛んだら口ん中でおかゆになっちゃうわよ。」
憎まれ口をたたきながら、私は茶漬けを小気味よくかき込む。