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本の紹介: 妻を帽子とまちがえた男

妻を帽子とまちがえた男
オリバー・サックス
晶文社

妻を帽子とまちがえる、そんなことあり得ない!

それがあるんです。

サックスの患者Pは優れた音楽家であり、それなりの業績も残していたが、ある時期から妙なことが起こり始めた。

町に設置してあるパーキングメーターを子供の頭とまちがえて、なでてやったり、ドアの取っ手に向かってやさしく話しかけたり、、、

しかし彼は精神に異常をきたしているのではない。脳の障害がそうさせているのだ。自分の足を見ても、それが靴なのか足なのかわからない。

脳は目から入る情報を処理してそれが実際に目に見えている物であると判断する。木が目に見える場合、それだけでは木が木であることがわかっていない、単にそれが目に映っているだけだ。その情報を処理して(過去の関連する記憶と結びつけるなど)木が木であることを判断するのは脳だ。

こんな風に、目から入る情報と認識できることとは直線的につながっておらず、これが関連を持たされて実物の認識となる。この関連性に問題が生じると、実際には無いものが見えたり、ある物が見えなかったりする。これは私たちがたまに経験する脳のいたずらだ。私が私であることも、外界の認識も、すべては脳が統治している。この統治能力が完璧なために、普通は何の故障もなく日常生活を送っているが、これが故障すると、全く別の世界が出現する。
by cahiersauvage | 2010-06-28 11:06 | 本の紹介