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思うとおりに歩めばいいのよ

思うとおりに歩めばいいのよ
ターシャ・テューダーの言葉
メディア・ファクトリー発行

ターシャ・テューダーといえばテレビで何度も放映されたこともあり、日本ではナチュラル・ガーデンで有名だと思うが、彼女はコルデコット賞を受賞するほどの有名な絵本作家でもある。自分が育った日常を基本にした絵本が多い。やさしい絵だ。そしてすばらしい人形作家でもある。こちらの方は商業的なものではないが、自分の子供たちのために作った彼女の人形を見ると、とても素人の作品とは思えないほどに手が込んでいる。
彼女は、絵を描くのは売るため、生活のため、そして球根をもっと買うためだと言い放つ。彼女にとって、庭は彼女自身であり、彼女の人生そのものという位置づけである。

人間は好きなことをして生きるのがいちばん良い生き方だと、彼女は言う。

この言葉だけに注目すると自己中心的だととらえることも出来るが、彼女の生き方を知ると、それはとんでもないことだということが分かる。

好きなように生きることは、人の言うことに従って生きることよりもある意味でむしろ困難が多い。自分の成す事全てに自分で責任をとってこそ、自分の好きなように生きるということが完結されるからだ。そのためには深く自分を見つめなければならない。自分が欲していることは何かを、常に自分に問わなければならない。そうした不断の努力があって初めて「思うとおりに歩む」ことが出来るのだ。

自分がどうしたいのか、何が好きなのか、こういうことは簡単に分かるようでいて、実は深淵をのぞかないとわからない。自分が嫌いなものは意外に分かりやすい。いろいろやってみて消去法で自分を精錬してゆく。そのような過程が必要なのだ。その意味から、やり直すということに躊躇するべきではない。

私は55才になるが、年をとればとるほど、だんだん自分の中心にあるものが見えてくる気がする。ずっと前に、仏像を彫る職人が「仏像は彫るのでない。木の中に眠っている仏像を私が彫り出すのだ」と言うのを聞いたことがあるが、自分を理解するのはこれに似ていると思う。自分のことでも、案外自分では分からないものだし、また、深く考えること無しには決して見えてこないものだと思う。自分のなす事全てについて、これは自分の本意か否かということを常に問わなければならないと思う。これを繰り返して初めて、わたし、というものが見えてくる。
by cahiersauvage | 2010-05-10 21:37 | 本の紹介